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松浦 巽◆お試し読み

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記憶の森(電子版)

BL短編小説2編。オカルト。
「記憶の森(同人誌とは別展開)」「幽霊の恋人(同人誌と同内容)」収録。
pixivに別バージョンのお試し読みあり
■子供のころ、自分は神隠しにあったらしい。真相を求めて故郷の森を訪れた祐一は、朽ちかけた神社で見知らぬ青年に抱かれる。自分はこの感覚を、この男を知っている……!?(記憶の森)。
■大学生の誠二は、事故死した幽霊・和利にとりつかれてしまった。和利を成仏させるため、誠二は彼の生前の恋人・祐貴を探し出すが、自分も祐貴に惚れてしまい……!(幽霊の恋人)。



▼お試し読み▼


◆記憶の杜・抜粋◆

 子供のころ、神隠しにあった――そうだ。

 十三年ぶりに訪れた故郷の町は、記憶のままのたたずまいでありながら、初めて見る場所のようでもあった。
 はたして故郷といっていいのか。転勤族だった父の都合で、一年かそこら滞在しただけの町だ。事件のあとまもなく転出して以来、近寄ったこともなければ、話題にのぼったこともほとんどない。
 一戸建てばかりが並ぶ、山あいの住宅地。昼下がりの今は道行く人の姿もなく、少し心細く思いながら、ひびわれたアスファルトを踏みしめる。



 くりかえし見る、同じ夢。
 恐ろしい鬼に追われ、うっそうとした森の中を逃げまどう悪夢。
 その森は、この町のはずれにある、あの森にちがいない。



 ぎし、と木のきしむ音。社殿の傾いた扉が激しく揺れ、みしみしと壊れそうな音を立てながら、ゆっくり開きはじめる。
 たちまちのうちに口が渇き、腋の下をいやな汗が流れた。
 逃げなければ。そう思ったが、金縛りにあったように手足が動かない。
 そうしている間にも、扉はじりじりと開いていく。
 奥の暗がりから響いてきた声が、心臓をわしづかみにした。
「――おかえり」



 雨は激しさを増し、風も出てきて、嵐の様相になってきた。携帯電話はちゃんと通じている。天気予報が快晴になっているのを見て、狐に化かされたような気分になった。
「なあ」
 男が言った。
「本当に、覚えていないのか?」
 太腿に男の手のひらの熱を感じて、一気に総毛立った。



 必死に走っている。
 恐ろしいものが追いせまるのを感じながら、暗い森の中を逃げている。
 追ってくるのは鬼だ。
 捕まったら食われてしまう。
 だから、なんとしてでも逃げなければ。
 もう少し、あと少しだ。
 行く手に森の終わりが見える。
 あそこまで逃げきることさえできれば……!



「あれは……」
「河西の兄ちゃん、だ」



◆幽霊の恋人・抜粋◆

 ――あ、花束。
 そう思った瞬間、笠井誠二は、ずんと肩が重くなったような感覚に襲われた。



《君はだれだ?》
「だ……れって……お、おまえこそ、何者だよ……」
 もうろうとしているせいで、驚きはそれほど感じない。それよりも体が異常にだるく、今にも倒れそうで、意識を保っているのがやっとの状態だ。
《俺は氷上和利。何者かと言われれば……いわゆる幽霊ってやつだと思うが》
「……ゆ、うれい……?」
《そう。俺はたぶん、事故で死んだんだよ》



「つまり、おまえが成仏できないのって、そのせいか? その――そいつに会えないのが心残りで……」
《そうかもしれない》
「そうか! なら話は簡単だ」
 誠二は目を輝かせて言った。
「要は、そいつを探して、ひと目会わせてやればいいんだろう? そうすりゃおまえは成仏できて、俺から離れてくれるってわけだ」



「事故のことも知らないって可能性だってあるぜ?」
《まさか。いくらなんでも、俺のアパートには寄ると思うし。大学の学生課にきけば、死んだことぐらいは教えてくれるだろうし》
「死んだことがわかったって、実家の連絡先がわからなけりゃ、連絡のしようがないだろう? そいつはおまえの実家のこと、知ってたのか?」
《いや、たぶん知らないと思う》
「ほらみろ。おまえが死んだとわかったって、どうしようもないじゃないか。今の俺たちと同じってわけだ」
《……そうだな》
 それでも和利がふさぎこんでいるので、誠二は秘蔵のウイスキーをとりだしてきて、憂さばらしの酒盛りを提案した。
「さあ、飲め! 今夜はとりあえず、酔っぱらって寝ちまおうぜ! 明日になったら、またいい考えも浮かぶさ!」
 頭の中の声と語らいながら一人で手酌を傾けるという、傍目には少々異様な飲み会を敢行し、いつのまにか酔いつぶれ――。



「おかえり、祐貴」
 祐貴はぎくりとして振りかえり、誠二の姿を認めてあからさまに眉をひそめた。
「君は――まだ何か用があるんですか」
「さびしいこと言うなよ。まさか、俺のことを忘れてしまったのかい?」
「? 何言って――」
「ずいぶん遅れてしまったけど、ほら、傘。でも、もう家に着いちゃったから、役に立たないか」
 そう言って傘をさしだしたとたん、祐貴の顔が表情を失い、みるみる蒼白になった。
「……か……和利……?」
「そう、俺だよ」



 ときおり見せる物憂げなまなざし。一転して晴れやかな笑顔。なにげないしぐさ。
 気がつくと誠二は、祐貴の一挙手一投足を目で追っていて、視線をそらすのに多大な努力を要するようになっていた。
 そして転機は、次の雨の晩にやってきた。


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