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松浦 巽◆お試し読み

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確定未来

SFサスペンス風味。Hなし。
pixivに別バージョンのお試し読みあり
新米刑事の大城がたまたま受けたのは、常識では考えられない謎の予告電話だった。かけてきたのは、未来が視えると自称する仁志。2人は急速に親しくなるが、仁志は何かを隠していて――。

▼お試し読み▼


「ねえ、寺田さん、教えてくださいよ」
 多発している空き巣狙いの捜査のため、住宅街を聞き込みにまわっている途中、大城は我慢できなくなって質問した。
「こないだの予告電話。あれっていったい、だれなんです?」
「だれって、善良な市民の一人だろう?」
「本当に善良なら、匿名でタレコミする必要はないじゃありませんか」
 あのときの予告は、本当に正しかった。強盗は、レジ前の店員を脅したところで、張り込んでいた捜査員たちに取り押さえられた。損害も怪我人もないスピード解決だ。犯人の車のナンバーも合っていた。
 不思議なのは、前々から計画されていたわけではなく、単独犯による突発的な犯行だったらしいことだ。どうして共犯でもない第三者が、前もって事件を知ることができたのだろう。
 大城は気になってほかの刑事たちにきいてみた。ところがみんな、知っているそぶりは見せるものの、だれもはっきりとは答えてくれない。大城だけ蚊帳の外だ。
「刑事課に来たばかりだから、信用できないのかもしれませんけど……捜査に関わることなのに、僕だけ知らないって、まずいような気がします」
 寺田は困った顔で大城を見た。
「俺の口からは言えん」
 唸るような口調で言った。
「そのうち知るかもしれんが、署内では触れないほうがいい。とにかく、奴の情報は正しいし、法にも触れていない。そういうことだ」



「なあ、超能力とか霊感とかって、信じる?」
「え? さ、さあ……」
「どうして俺が事件を予告できたのか、あんたはそれが知りたいんだろ?」
 ヒトシとは初対面のはずだ。それなのに自分の目的を言い当てられて、大城は急に薄気味悪くなった。
 海岸には、ほかに人影は見えない。打ち寄せる波の音と、ときおり海鳥の鳴き声が聞こえるだけだ。
 体格のいい若い男と、二人きりでこうして向かいあっているのが、ひどく危険なことのように思えてきた。
「俺には、未来が視えるんだ」
 大城の目をまっすぐ見つめて、ヒトシは憂いを含んだ声で言った。
 ふっと苦笑をにじませて続ける。
「って言っても、信じないよな」
 ヒトシは携帯電話を取り出し、命令するように言った。
「携帯の番号、教えなよ」
「え――」
 つい正直に答えてしまってから、大城は、まずかっただろうかと一瞬うろたえた。すっかり相手のペースに乗せられている。これでは刑事失格だ。



「ふうん。けっこういい奴なんだな」
「違うよ」
 仁志の横顔がふてくされる。
「正義の味方になりたいわけじゃない。いやなものを視たくないだけだ」
「視えるって、どういうふうに視えるんだ? 映画みたいに映像が浮かぶとか?」
「だいたいはそんな感じ。あとは、音だけとか匂いだけのこともあったり」
「今日のことも、わかってたのか?」
「うん」
 今日の仁志は、前回会ったときに比べて妙にしおらしい。それがかえって不気味で、大城は先ほどから落ち着かない。
「未来がわかるって、どんな感じなんだ? 明日のことも、あさってのことも……この先どうなるか、みんなわかってしまうとか……?」
「未来は、決まってるわけじゃないよ」
 仁志は大城の方に顔を向け、子供に言い聞かせるように言った。
「だれかの行動一つで、未来は変わっていく。でなきゃ、通報する意味がない。そうだな……たとえばチェスや将棋で、三手先を読む感じ。相手のつぎの手が違ったら、三手先も変わるだろ?」



「へえ、けっこう片づいてるじゃないか」
 アパートの部屋に上がった仁志は、開口一番そう言った。
「家にいる時間が短いからな。散らかる暇もない」
 不規則な生活のため、大城は両親との同居をやめて独り暮らしをしている。物がないので、六畳一間でもそれほど狭さは感じない。
「布団は君が使っていいよ」
「大城さんは?」
「毛布で適当に寝る」
「頼んだのはこっちなんだから、俺が毛布で寝るよ」
 ラーメンを食べたあと、バイクの前でぐずぐずしていた仁志は、泊めてほしいと急に言いだした。大城ははじめ断わったが、仁志が友人宅に泊まると母親に電話してしまったため、無理やり追い返すわけにもいかず、結局連れてくるはめになった。
 話したいことでもあるのかと思ったが、交代でシャワーを使い、寝る準備が整っても、いっこうにその気配はない。そのうちすやすやと規則正しい寝息が聞こえはじめ、大城は拍子抜けして自分も眠りについた。
 途中で目が覚めたのは、苦しそうな呻き声が聞こえてきたためだ。
 悪い夢でも見ているのか、仁志が苦しそうな顔で唸っている。
「おい、起きろよ」
「うわ――わあっ!」
 肩をつかんで揺さぶると、仁志は声を上げて飛び起きた。
「大丈夫か」
 仁志はしばらく、虚空を見つめたまま荒い息をしていた。それからのろのろとあたりを見回し、大城の顔に視線を合わせた。
「ごめん……ちょっと夢を見ただけ」
「予知夢でも見たか」
 大城は軽い気持ちで言ったのだが、仁志の体がびくりとするのが見えた。


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