Posted by 松浦巽 - 2013.02.03,Sun
短編小説。SMコメディ。
※pixivに別バージョンのお試し読みあり
*配信変更作業中
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彰は、憧れの先輩である、漫画家の陽一のところにアシスタントに入る。そこで偶然SMグッズを発見。よこしまな気持ちが抑えられなくなり――。
*配信変更作業中
▼お試し読み▼
押し入れを開けたとたん、上の方にあったダンボール箱がぐらりと傾き、とめるまもなく転がりおちてきた。
「!!!」
カーペットの上に散乱する中身。
彰は一瞬、自分の目を疑った。
色とりどりのバイブレーターに、大小の革ベルト、手錠、口枷、ろうそく、そのほか雑多ないかがわしい道具類――そして数十枚のポラロイド写真。
写真に写っているのは、どれも若い男の裸体だった。それも、ただの裸ではない。ロープで縛られ、股間もあらわに恥ずかしいポーズをとっているものばかりだ。
だが驚くべきは、モデルの顔だった。
「あの、あの、あの、これ、これ、これ」
狼狽して振りかえると、驚いたように口を開けた陽一と目が合った。
陽一の顔がみるみる赤くなった。
そのストイックな外見からは想像もつかない淫靡で扇情的な作品を描く陽一に、彰は当時から、憧れを抱く一方で、少し苦手意識を持ってもいた。
陽一が近くにいると、背中がむずむずするようで、どうも落ちつけないのだ。
だが、陽一のほうはそうは思っていないらしく、在学中からなにかと彰にかまい、卒業後も、ちょくちょくアシスタントの仕事を依頼してきた。
「だっておまえ、器用だし、こっちの言いたいことすぐ察してくれるからさあ」
「そうっすか~? 俺、けっこう不器用なほうだと思うんすけど」
「謙遜するなって。僕が背景まで任せるの、おまえぐらいなんだぜ?」
資料や画材のあふれかえった六畳間。こたつのテーブルを挟んで、とりとめのない話をしながら、銘々の作業を進める。
「うわ~、エロエロな構図~! 先輩って、見た目すごくマジメそうで、こんなもの描くようには見えないっすよね」
「おまえに言われたかないね。おまえなんか、外見体育会系のくせに少女漫画描いたりして、それって絶対詐欺だって」
「ああ、それは鼻フック。鼻の穴にひっかけて、頭の上通して後ろでとめるの……AVで見たことない?」
「ああ、言われてみれば……じゃ、これは?」
「それはクスコ。膣や肛門に入れて、広げて中を見たりするんだけど」
「へええ……あ、これはなんですかね?」
天真爛漫を装って質問を続けるうちに、陽一も平静を取りもどして、彰の方に近づいてきた。じきに、自らグッズを取りあげて解説を始める。
「これは縄手錠、これはアナルプラグ、それからこっちは、言わずと知れた浣腸器……」
「それじゃ、これは?」
ころあいをみて、彰は、目をつけていた革の拘束具を指さした。
腰に巻くベルトの両脇にあたる位置に、小さな袋が取りつけられた形のものだ。
「ああ、これは手枷の一種だよ。このグローブ部分に、握った手を入れるんだ」
「う~ん、聞いただけじゃよくわかんないっす。どこがどうなるんですか? ちょっと先輩、実際にはめてみてださいよ」
「ええ? 僕が?」
「ちょっとだけ、ちょっとだけ。俺も絵の参考にしたいんすよー」
「それは……」
さすがに不安を覚えたのか、陽一は口ごもった。
「これ、どうやって使うんすかね? まさか、足首につけて、天井から吊るしたりとか」
「違う違う。膝につけて、首にひっかけ――」
言ってから、陽一はしまったという顔をした。ひきつった笑いを浮かべながら、一歩、二歩と後ずさりする。
「おい……まさか、それも試せとか言わないだろーな」
「もちろん、そのまさかです」
彰は、ベルトの留金をはずしながら、にんまりと笑った。
「いやだ!」
「やらせてください!」
押し入れを開けたとたん、上の方にあったダンボール箱がぐらりと傾き、とめるまもなく転がりおちてきた。
「!!!」
カーペットの上に散乱する中身。
彰は一瞬、自分の目を疑った。
色とりどりのバイブレーターに、大小の革ベルト、手錠、口枷、ろうそく、そのほか雑多ないかがわしい道具類――そして数十枚のポラロイド写真。
写真に写っているのは、どれも若い男の裸体だった。それも、ただの裸ではない。ロープで縛られ、股間もあらわに恥ずかしいポーズをとっているものばかりだ。
だが驚くべきは、モデルの顔だった。
「あの、あの、あの、これ、これ、これ」
狼狽して振りかえると、驚いたように口を開けた陽一と目が合った。
陽一の顔がみるみる赤くなった。
そのストイックな外見からは想像もつかない淫靡で扇情的な作品を描く陽一に、彰は当時から、憧れを抱く一方で、少し苦手意識を持ってもいた。
陽一が近くにいると、背中がむずむずするようで、どうも落ちつけないのだ。
だが、陽一のほうはそうは思っていないらしく、在学中からなにかと彰にかまい、卒業後も、ちょくちょくアシスタントの仕事を依頼してきた。
「だっておまえ、器用だし、こっちの言いたいことすぐ察してくれるからさあ」
「そうっすか~? 俺、けっこう不器用なほうだと思うんすけど」
「謙遜するなって。僕が背景まで任せるの、おまえぐらいなんだぜ?」
資料や画材のあふれかえった六畳間。こたつのテーブルを挟んで、とりとめのない話をしながら、銘々の作業を進める。
「うわ~、エロエロな構図~! 先輩って、見た目すごくマジメそうで、こんなもの描くようには見えないっすよね」
「おまえに言われたかないね。おまえなんか、外見体育会系のくせに少女漫画描いたりして、それって絶対詐欺だって」
「ああ、それは鼻フック。鼻の穴にひっかけて、頭の上通して後ろでとめるの……AVで見たことない?」
「ああ、言われてみれば……じゃ、これは?」
「それはクスコ。膣や肛門に入れて、広げて中を見たりするんだけど」
「へええ……あ、これはなんですかね?」
天真爛漫を装って質問を続けるうちに、陽一も平静を取りもどして、彰の方に近づいてきた。じきに、自らグッズを取りあげて解説を始める。
「これは縄手錠、これはアナルプラグ、それからこっちは、言わずと知れた浣腸器……」
「それじゃ、これは?」
ころあいをみて、彰は、目をつけていた革の拘束具を指さした。
腰に巻くベルトの両脇にあたる位置に、小さな袋が取りつけられた形のものだ。
「ああ、これは手枷の一種だよ。このグローブ部分に、握った手を入れるんだ」
「う~ん、聞いただけじゃよくわかんないっす。どこがどうなるんですか? ちょっと先輩、実際にはめてみてださいよ」
「ええ? 僕が?」
「ちょっとだけ、ちょっとだけ。俺も絵の参考にしたいんすよー」
「それは……」
さすがに不安を覚えたのか、陽一は口ごもった。
「これ、どうやって使うんすかね? まさか、足首につけて、天井から吊るしたりとか」
「違う違う。膝につけて、首にひっかけ――」
言ってから、陽一はしまったという顔をした。ひきつった笑いを浮かべながら、一歩、二歩と後ずさりする。
「おい……まさか、それも試せとか言わないだろーな」
「もちろん、そのまさかです」
彰は、ベルトの留金をはずしながら、にんまりと笑った。
「いやだ!」
「やらせてください!」
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